ミュージカル『バーレスク』とは
ミュージカル『バーレスク』は、2010年に公開されたクリスティーナ・アギレラ主演のミュージカル映画『バーレスク』を舞台化した新作ミュージカルです。
映画版は第68回ゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞を受賞し、作品賞にもノミネートされるなど、世界中で愛されてきました。
舞台化に際しては、映画版の脚本・監督も務めたスティーヴン・アンティンが脚本を手掛け、演出・振付はトドリック・ホールが担当しています。
さらにエグゼクティブプロデューサーとしてクリスティーナ・アギレラ本人もクレジットされており、映画版でもおなじみの「Welcome to Burlesque」「Express」「Show Me How You Burlesque」といった楽曲に加え、舞台オリジナルの新曲も多数盛り込まれています。
本作は2024年6月にイギリス・マンチェスターで世界初演を果たした後、2025年7月にロンドン・ウエストエンドでの上演も話題となりました。
連日熱狂的な喝采を浴び、9月に惜しまれながら幕を閉じたばかりです。
そして2026年5月、礼真琴を含む新たな日本キャスト陣と共に、初の海外公演の幕開けを迎えることになります。
物語の設定と主人公アリの役割
ミュージカル『バーレスク』の舞台は、ニューヨークの夜に輝く華やかなクラブ「バーレスク・ラウンジ」です。
小さな町からニューヨークにやってきた主人公アリ(礼真琴が演じる予定)は、失踪した実の母親を探しに来ていました。
夜の街に輝くネオンの下、華やかで少し危険な香りが漂う「バーレスク・ラウンジ」にたどり着いたアリは、クラブのオーナーであるテスと、個性豊かなパフォーマーたちに出会います。
最初は店のウェイトレスとして働き始めたアリですが、やがて彼女の圧倒的な歌唱力とダンスの才能が明らかになると、店はたちまち大繁盛することになるのです。
一方で、多額の負債を抱え存続の危機に瀕するクラブを狙うテスの元夫ヴィンスが、店を手中に収めるための悪巧みをしているという、ドラマティックなストーリー展開となっています。
礼真琴が身に纏うバーレスクの衣装の特徴
豪華絢爛な衣装デザインの背景
バーレスクという舞台作品では、衣装が物語の重要な要素となります。
映画版『バーレスク』の衣装デザインを担当したのは、アカデミー賞ノミネートされたこともある著名な衣装デザイナー、マイケル・カプランです。
彼は「モダンなバーレスクに、レトロなフィーリングを加え、歴史的起源への敬意を表したかった。
下品にならない上品さ、そしてパリの『クレイジーホース・サルーン』、ミュージカル『キャバレー』、1960年代のテレビ番組『ハルラバロース』、『ムーラン・ルージュの綺想曲』といった要素を組み込みたかった」とコメントしています。
映画版の衣装は1920年代から1940年代にかけてのスタイルを基調としながらも、1950年代から1960年代のフィーリング、さらには少しのフューチャリズムを含むという、多層的でクラシカルな美学を表現しています。
衣装の主な要素:スパンコール、ビーズ、羽毛
バーレスクの衣装を特徴づけるのは、何といっても豊富に使用されるスパンコール(セコイン)、ビーズ、そして羽毛です。
これらの素材を組み合わせることで、舞台上で光を反射させ、観客の視線を引きつける華やかな効果が生み出されます。
映画版で複数のシーンで見られる衣装には、以下のような特徴があります。
「I Am a Good Girl」の衣装:ピンク色とピーチ色を基調とした、フェザーとサテン素材の衣装。
デザイナーは「デザートのような見た目にしたい、ソルベのように」とコメントするなど、柔らかく可愛らしい印象を狙った設計となっています。
「Express」の衣装:ハンドブラに近いデザインの衣装で、胸の部分に手をかたどったビーズディテールが施されており、ユーモアとセクシーさを兼ね備えています。
ガーターベルトだけでできたスカート部分は、ダンサーの動きに合わせてワイルドに揺れる仕組みになっており、動的な視覚効果を演出しています。
ファイナル・シーンの金色チェーン衣装:ゴールドチェーンとスワロフスキー・クリスタルで手作りされた衣装。
全てのチェーンが1つ1つ手でリンク状に繋ぎ合わされており、まさに工芸品レベルの完成度を誇っています。
この衣装に感銘を受けたスワロフスキー社のトップが、デザイナーに宝飾ラインの制作を依頼したほどです。
透け感と洗練性のバランス
バーレスクの衣装における重要な特徴は、単に肌を見せるのではなく、「見せる・見せない」の緊張感を作り出すという点です。
これは古典的なバーレスク芸能の本質である「ティーズ(じらし)」の概念を舞台衣装に落とし込んだものです。
映画版でも複数のシーンで、戦略的に配置された装飾品やビーズが肌を覆い、下品さを避けながらもセクシーさを表現しています。
例えば、胸部や臀部に配置されたビーズディテール、あるいはガーターベルトの配置など、細部にわたって計算されたデザインになっているのです。
礼真琴が演じる舞台版バーレスクの衣装への期待
元宝塚トップスターとしてのアドバンテージ
礼真琴は、2019年から2025年8月まで宝塚歌劇団星組のトップスターを務めた実力派です。
彼女は歌・ダンス・演技の三拍子が揃っており、2021年には『柳生忍法帖/モアー・ダンディズム!』での演技が評価され、文化庁芸術祭賞の演劇部門新人賞を受賞しています。
宝塚での豊富な舞台経験と、そこで培われた身体表現の技術は、バーレスクという極めてダイナミックな舞台作品に適応する上で、大きなアドバンテージとなるでしょう。
宝塚で様々な衣装を身に纏い、複雑な振付をこなしてきた経験は、バーレスクの華やかな衣装と洗練されたダンスの両立を実現する上で、不可欠な要素となります。
衣装デザインの新展開への期待
舞台版『バーレスク』の衣装デザインは、映画版のマイケル・カプランではなく、ウエストエンド版では異なるデザイナーが担当しています。
この新しいデザイナーがどのような美学を日本版に持ち込むのかは、現在のところ明かされていません。
しかし確実なのは、礼真琴の圧倒的な存在感と歌唱力を引き出すために、舞台版の衣装は映画版以上に精密に計算された設計になっているということです。
梅田芸術劇場が企画・制作を手掛けるこの日本版バーレスクは、礼真琴というスター性を最大限に活かすための衣装デザインが施されるものと予想されます。
バーレスクの衣装における技術的側面
ビーズとスパンコールの装飾技法
バーレスクの衣装に使用されるビーズやスパンコールは、単に衣装に貼り付けられているわけではありません。
それぞれが戦略的に配置され、舞台上での光の反射を計算した配置になっています。
映画版でマイケル・カプランが語ったところによると、ファイナル・シーンの衣装に使用されたゴールドチェーンだけでも、膨大な時間を要して手作りされたとのことです。
このレベルの精密性は、舞台版でも継続されるものと考えられます。
パフォーマンスの自由度とのバランス
衣装が豪華であればあるほど、パフォーマーの動きが制限される可能性があります。
しかし優れた衣装デザインは、見た目の豪華さと実用性のバランスを取ることができます。
礼真琴が身に纏うであろう舞台版バーレスクの衣装は、複雑なダンスシーンでも着用でき、彼女の圧倒的なダンス技術を十分に発揮できるように設計されるはずです。
宝塚での厳しいトレーニングで鍛えられた彼女の身体表現が、衣装とともに最大限に引き出される—それが舞台版バーレスクの見どころとなるでしょう。
フューチャー・ポイント
ミュージカル『バーレスク』日本キャスト版は、2026年5月から8月にかけて、東京・東急シアターオーブ、大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座の3都市での上演が予定されています。
礼真琴がどのような衣装を身に纏い、舞台上でどのように表現するのかは、来年の上演を待つしかありません。
しかし、彼女の宝塚での経験、圧倒的な歌唱力とダンス技術、そして英国ウエストエンドで熱狂を呼び起こした舞台版『バーレスク』の完成度を考えれば、日本版での彼女の姿は必見といえるでしょう。
古典的なバーレスク芸能の「ティーズ」という概念を舞台衣装に体現した、豪華絢爛な衣装群。
その中を颯爽と舞う礼真琴の姿が、2026年の舞台上に描き出される日が待ち遠しい限りです。


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