2026年春、伝説のシンガーソングライター・HYDEから待望のニューアルバム「JEKYLL」がリリースされることが発表されました。 2025年10月26日の幕張メッセでの「HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR -JAPAN FINAL-」終演後に明かされたこのニュースは、音楽ファンを驚かせています。 特に注目されるのは、アルバムタイトルと L’Arc~en~Ciel のベーシストであるtetsuyaが率いるトリビュートバンド「Like-an-Angel」のボーカル「jekyll」との関連性です。
23年ぶりの続編となる「JEKYLL」の意義
2002年にリリースされたHYDEの1stソロアルバム「ROENTGEN」は、L’Arc~en~Cielの激しいロックサウンドから一転、オーケストラを主体とした静寂と内省の世界を表現した傑作です。 「ROENTGEN」とは、骨格を透視するレントゲン写真を指す言葉であり、HYDEの内面世界を「透視」するというコンセプトで制作されました。 新作「JEKYLL」は、この「ROENTGEN」から実に24年を経て発表される続編です。 タイトルが示すのは、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの古典文学『ジーキル博士とハイド氏』に登場する二人の人物です。 この物語は、一人の人間の中に存在する相反する二つの側面――善と悪、理性と欲望、静と動――を象徴しています。 HYDEは自身のキャリアを通じて、L’Arc~en~Cielという激動のロックバンドの一員として「動」の世界を表現してきました。 一方、ソロアルバム「ROENTGEN」では音楽が持つ瞑想的で静謐な側面を探究しました。 「JEKYLL」というタイトルは、その静の世界に潜む、もう一つの人格――混沌と衝動の表現――を意味していると考えられます。
Like-an-Angelの「jekyll」との関連性
Like-an-Angelは2023年にtetsuyaによって結成された L’Arc~en~Cielのトリビュートバンドです。 バンドのボーカルである「jekyll」というステージネームは、HYDEの声質に似ているタイ出身の歌手であり、彼の本名ではなく、tetsuyaによって付けられたステージネームです。 面白いことに、jekyllというステージネーム自体が「Jekyll and Hyde」のジキルを指しており、このネーミングがもたらす二重性は意図的であると考えられます。 jekyllの自身のインタビューでは「声は似せようとして似ているわけではない」と述べており、単なる模倣ではなく、音域の近さがもたらす結果であると語っています。 tetsuyaが2025年6月にLike-an-Angelのデビューシングル「Angel beside yoU」をリリースした際、このような音楽活動の背景には「L’Arcの音楽をライブで披露したい」という想いがありました。 つまり、Like-an-Angelは L’Arcのカバー活動を通じて、バンドの音楽遺産を新しい形で継承しようとする試みなのです。
「静」から「狂」へ――新たなフェーズの幕開け
HYDEは「激しいHYDEは一旦充電期間に入る」と公言していました。 新作「JEKYLL」とそれに先駆けるオーケストラツアー「HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL」は、まさに「動」から「静」へと向かうこれまでのキャリアの流れを、再び反転させる試みとなるでしょう。 2026年1月から始まるオーケストラツアーは、15の会場で開催される予定です。 このツアーは重厚なロックサウンドとオーケストラの調べが融合し、音楽が映画のような物語性を帯びる空間を創出します。 ROENTGENの時代に開拓した「静」の世界から、新たに生成される「動」と「静」のダイナミズムが表現されることになります。
ROENTGEN から JEKYLL へ――人間の二面性の深掘り
タイトル「JEKYLL」が象徴する二面性は、単なるアルバムの概念に留まりません。 HYDEという音楽家自身が、バンドのボーカルとしての激情的な表現と、ソロアーティストとしての内省的な表現の間で揺らぎ続ける存在だからです。 「ROENTGEN」がHYDEの内面を透視するレントゲン写真だとすれば、「JEKYLL」はその透視された内部に潜む、別の人格が目覚める瞬間を記録した作品であると予想されます。 オーケストラという豪奢な装置を使いながらも、ロック音楽の破壊的なエネルギーとの融合を模索する試みは、HYDEが常に探究してきた「対極の調和」という美学の新たな段階を示唆しています。
HYDEソロ活動25周年への道
2026年はHYDEのソロ活動25周年にあたります。 この区切りの年に、最初の1stアルバムの続編を発表するという選択は、象徴的でありながらも実験的です。 ファンからは「ROENTGEN II」という呼び方も聞かれていますが、新作はあくまで「JEKYLL」という独立したタイトルを掲げています。 これは、単なる過去の焼き直しではなく、現在のHYDEが新たに紡ぎ出す物語だからなのです。 2026年春のアルバムリリースまで、また2026年1月から始まるオーケストラツアーを通じて、HYDEが新たなフェーズで創造する「静」と「動」の融合がどのような形で表現されるのか、音楽ファンの期待はますます高まります。
オーケストラツアー開催地(2026年1月~4月)
福岡県、宮城県、大阪府(2公演)、北海道、埼玉県、東京都、香川県、広島県、山口県、愛知県(2公演)、福岡県(2公演)、神奈川県(2公演)
ジキルというタイトルが持つ、人間の内なる複数性と創造的可能性が、2026年春の新作アルバムを通じてどのように解放されるのか。 HYDEの25年のソロキャリアに新たな章を刻む「JEKYLL」の登場は、単なるアルバムの発売以上の意味を持つのです。


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