肘打ち動画の元ネタと流行った原因

肘打ち界隈とは?基本から理解する

TikTokを中心に、今最も熱い「肘打ち界隈」をご存知でしょうか?
スマートフォンを床に置いて、日常のモヤモヤやストレスを肘で思いきり打ち出す——そんなシンプルながらクセになる動画が、2025年秋の若者を中心に大きな盛り上がりを見せています。
2025年10月現在、高校生のトレンドランキングでも4位にランクインする勢いで拡散中。
この記事では、肘打ち界隈がどのようにして生まれ、なぜこんなに流行ったのかを、元ネタから最新の展開まで詳しく解説します。

肘打ち界隈の定義

肘打ち界隈の定義はシンプルです。
スマートフォンを床に置き、自撮りから切り替えてカメラを天井に向け、画面に対して肘を何度も打ち下ろす——というのが基本的な動画フォーマットです。
動画には「○○されて、△△で今コレ」というテロップが表示され、日常の中で感じた理不尽なことや、ストレスを感じた出来事を言語化する工夫が凝らされています。
この動画スタイルの魅力は、何といっても「共感」と「ストレス発散」が一体になっているところです。
見ている側も「あるある」と笑顔になり、投稿者も肘打ちという物理的な動きを通じてモヤモヤを吹き飛ばす。
そんな相乗効果が、老若男女を問わずユーザーを惹きつけているのです。

元ネタはどこから?

保育学生「なかみち」が最初

肘打ち界隈の起源は、意外と明確です。
TikTokerの「なかみち」(@.888gh)が、劇場アニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のエンディングテーマ「不思議のカルテ」を流して投稿したのが始まりです。
保育実習で園児に「先生、顔にぶつぶつ(ニキビ)いっぱいあるね」と指摘されたエピソードを「今これ」という表現で肘打ちしたのが、記念すべき最初の投稿でした。
なかみちさんは金髪ロン毛の保育学生として知られており、その後も保育実習でのリアルすぎる日常を投稿し続けたため、保育学生や教育関係者からの共感コメントが大量に寄せられました。
「カラコンなくて裸眼出勤したら先生、オオカミみたいって言われた」「お弁当を食べる時に先生はなんでそんなに黄色いの?って言われた」——こうした園児あるあるコメントが次々と投稿され、独特のコミュニティが形成されていきました。

爆発的な流行のきっかけ

セカンドバッカーの「犬とバカ猫」

肘打ち界隈の元ネタはなかみちでしたが、真の爆発的流行をもたらしたのは、2人組バンド「セカンドバッカー」のドラマー・まさみ(@masamidrums)です。
セカンドバッカーは、Gt/Voのこうへいとドラマーのまさみによる2人組バンド。
2023年3月に結成され、SNS発の注目バンドとして知られていました。
2024年5月には大型野外音楽フェス「JAPAN JAM 2024」に出演し、同年7月の渋谷WWWでの1stワンマンライブはソールドアウト。
すでに相応の知名度を持つアーティストでした。
転機は2025年7月9日。
セカンドバッカーが新曲「犬とバカ猫」を配信リリースしました。
その後、8月上旬にまさみが個人TikTokで肘打ち動画を連投し始めたのです。
まさみが投稿した肘打ち動画は以下のような内容でした:
「大阪のタワーレコード来たら中学生のリスナーいて『夏休みいいな〜』って言ったら『まさみくんは年中夏休みじゃんw』って言われて図星で今コレ」「一生夏休みだもん俺」「手相占いしたら100歳まで生きれるけど知性と金運と結婚は無しって言われてただ寿命が長いアホにされて今コレ」「家の隣のコンビニで『写真撮ってください!』って言われて撮ったら『○○のコンビニにまさみいた!』って住所晒されて今コレ」——こうした自虐的で共感性の高いネタを、リズミカルに肘打ちする映像が、瞬く間にバズを起こしたのです。

なぜ「犬とバカ猫」が肘打ち界隈の音源に定着したのか?

「犬とバカ猫」が肘打ち界隈の公式音源として機能するようになった理由は複数あります。
まず、楽曲自体のポップで心地よいビート。
小気味いいリズムに乗せてテンポよく歌詞が詰められ、何度も繰り返すサビが印象的です。
この音源の構造が、肘打ちの動きと絶妙にシンクロするのです。
肘を打ちおろすタイミングと楽曲のビートが一致し、見ていて気持ちよいリズム感を演出します。
次に、歌詞の「切なさ」。
「不意に目配せ 今はね ダメだね」「見たいなら 痛いから ウザいから」——こうした歌詞に込められた好きな人への想い、すれ違い、距離感といった感情が、日常のモヤモヤやストレスとリンクしやすいのです。
見る側も、自分の過去の思い出や誰かとの関係が頭をよぎる。
単なるポップソングではなく、心に刺さる深さがあるからこそ、多くのユーザーが「犬とバカ猫」を自分のストーリーに重ねるのです。

流行が加速するきっかけ

インフルエンサーの参加と複合的な拡散

肘打ち界隈が真の全社会的トレンドに進化したのは、大手インフルエンサーたちが次々と参加し始めた8月中旬以降のことです。
かやゆー(ヤングスキニー)、なえなの、チョコレートプラネットなど、各ジャンルで活躍する有名クリエイターたちが肘打ち動画を投稿しました。
さらには、動画コンテンツだけにとどまらず、関連動画の合計再生数が8億回を突破するという驚異的な数字を記録しました。
9月に入ると、TikTok音楽チャートでトップ50に、そしてトップ1にランクイン。
Spotifyの「Spotify Japan 急上昇チャート」にも登場し、音楽配信プラットフォームでも目に見える成功を収めました。
さらに驚くべきは、テレビメディアへの進出です。
2025年10月6日、セカンドバッカーはTBS系の音楽番組「CDTVライブ!ライブ!」にテレビ初出演しました。
バンド結成から約2年で、SNS発の若手バンドがゴールデンタイムの全国放送に登場するという快挙を成し遂げたのです。
この放映が、さらに一般層への認知を広げました。

肘打ち界隈の投稿パターンと多様化

肘打ち界隈の面白さは、その汎用性の高さにあります。
最初は「日常のストレスを発散する」というコンセプトでしたが、時間とともに多様な投稿パターンが生まれました。
基本的な「○○されて、△△で今コレ」という定型文はそのままに、背景をモノクロにして雰囲気を出したり、画面の端からテロップをフェードインさせたり、表情やしぐさだけで感情を伝えたりと、編集の工夫が増えています。
さらに、他ジャンルとのミックスも広がり、ファッションコーデ紹介のあとに肘打ちを入れたり、カフェでの一コマから落ちをつけたりと、創意工夫が凝らされた投稿が日々生まれています。
高校生から大人まで、性別や職業を問わず、誰もが自分のストーリーを肘打ちに乗せる——それが肘打ち界隈の最大の特徴です。

肘打ち動画が流行った根本的な理由

では、なぜここまで肘打ち界隈は流行ったのでしょうか?
その理由は、社会心理学的な背景にあります。

1. ストレス発散と身体表現の融合
現代社会は、ストレスに満ちています。
学生なら学校の人間関係や受験勉強、社会人なら職場の業務や対人関係。
そうした「言葉にできないモヤモヤ」を、肘という単純な動きで物理的に表現できるのが、肘打ち動画の最大の魅力です。
言語化する手間なく、シンプルな動作でカタルシスを得られるのです。

2. 誰でも真似できるシンプルさ
複雑なダンスはできない、編集技術もない——そんな一般ユーザーでも、スマートフォンを置いて肘を打つだけ。
運動音痴でも、高齢者でも、子どもでも対応可能です。
この参加ハードルの低さが、爆発的な拡散を生み出しました。

3. 共感性の高さ
「保育実習で園児に容姿を指摘された」「手相で寿命だけ長いと言われた」——こうした日常のあるあるネタが、多くのユーザーの心に響きます。
見ている側も「わかる〜」と共感でき、投稿者とのつながりを感じるのです。
この共感の輪が、どんどん広がっていったのです。

4. 音楽との絶妙なシンクロ
「犬とバカ猫」のポップで心地よいビートが、肘打ちのタイミングと完璧にマッチしています。
リズム感のある映像を見ることで、視聴者も気持ちよさを感じ、自分でも試してみたくなる——そんな好循環が生まれたのです。

5. SNS時代の「参加型」エンタメ
TikTokをはじめとするSNSは、誰もが発信者になれるプラットフォームです。
肘打ち界隈は、ただ見るだけではなく、自分も参加して発信できるという、Z世代が求める「参加型」のエンタメなのです。

セカンドバッカーの背景

バンド名に込められた想い

セカンドバッカーが肘打ち界隈のムーブメントを生み出した背景には、バンド自体の想いがあります。
バンド名「セカンドバッカー」には「あなたが『好きだよ』と言ってくれるのであれば、僕らがあなたにとって2番目の存在であっても全力であなたを大切に思うよ。それこそが愛なんじゃないか」という意味が込められています。
このメッセージは、「犬とバカ猫」の歌詞にも反映されています。
好きな人への想いが伝えられない、距離を置かれている、でも相手を大切に思う——そんな一途な気持ちが、ポップなメロディに乗せて表現されているのです。
実は、この「伝えられない想い」「言葉にできないモヤモヤ」というテーマが、ユーザーたちの日常ストレスと見事にリンクしました。
肘打ちという物理的な表現を通じて、言葉にできない感情を吐き出す——セカンドバッカーのバンドコンセプトと、ユーザーのニーズが完璧に噛み合ったのです。

2025年秋、肘打ち界隈の現在地

2025年10月現在、肘打ち界隈は最盛期を迎えています。
高校生トレンドランキングでは4位にランクイン(渋谷トレンドリサーチ調べ)。
TikTokのハッシュタグ「#肘打ち界隈」は数千万回の再生数を記録し、ユーザー生成コンテンツ(UGC)は日々増え続けています。
Spotifyでの再生数は130万回を突破し、YouTubeのMV再生数も150万回近くに達しています。
セカンドバッカーは、CDTVでのテレビ初出演を果たした後、東名阪ツアーを展開し、10月21日の恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン公演をファイナルに控えています。
バンドの総TikTokフォロワー数は138万人を突破し、SNS発の若手バンドから、真の「メジャーアーティスト」への階段を上っている最中です。

今後の展開予想

肘打ち界隈の未来

肘打ち界隈のトレンドは、今後どのような展開を見せるのでしょうか?
現在のところ、肘打ち動画は依然として新作が日々投稿されており、下火になる気配は見られません。
ただし、トレンドの常として、いずれは新しいダンスやフォーマットに置き換わる可能性があります。
予想されるシナリオとしては、まず「肘打ち動画の派生形」が広がる可能性。
手拍子系、ステップ系、ジャンプ系など、肘打ちと同じくらい単純で誰でも真似できる新しい身体表現が流行するかもしれません。
また、楽曲面でも、「犬とバカ猫」の成功に続く「第二の肘打ち公式曲」が現れる可能性があります。
セカンドバッカー自身、新曲「告白」「片思い」「昔話」「嵐の夜に」「夜露死苦」などを含むEP『言えなかったことばっかりだった。』を8月6日にリリースしており、これらの楽曲も肘打ち動画の音源候補になり得ます。
さらには、タレント事務所や広告代理店が「肘打ちを活用したキャンペーン」を企画する可能性も高い。
すでに一部の企業CMで肘打ちが採用されているという情報もあり、商業化も進む見通しです。

まとめ:肘打ち界隈から見える現代のトレンド

肘打ち界隈の爆発的流行は、単なる「その場限りのネタ」ではなく、現代社会とZ世代のニーズが見事に合致した象徴的なムーブメントです。
ストレスに満ちた日常の中で、言葉にできないモヤモヤを物理的に表現したい。
でも難しいことは避けたい。
むしろ、楽しく、共感しながら、みんなで参加したい——そうした欲求が、肘打ち動画という単純で誰でもできるフォーマットを通じて、一気に開花したのです。
セカンドバッカーのメンバー、なかみちといった当初のキーパーソンから、今では数百万人のユーザーが参加する大規模なムーブメントに成長した肘打ち界隈。
今後も、このトレンドから目が離せない状況が続きそうです。
あなたも、日常のモヤモヤを肘打ちで吹き飛ばしてみませんか?
そして、あなたの「今コレ」を世界に発信してみませんか?
肘打ち界隈は、そんな誰もが主役になれるムーブメントなのです。

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