2025年8月27日、奈良市議会議員に当選したばかりのへずまりゅう氏(34)が自身のX(旧Twitter)で初の議員報酬明細を公開し、大きな話題となっている。
「地方議員でもこんなにあるんですね」という率直な感想とともに公開された明細書は、多くの国民に地方議員の報酬実態について考えさせるきっかけとなった。
へずまりゅう氏の議員報酬明細を完全公開
8月分の詳細内訳
へずまりゅう氏が公開した8月分の報酬支給明細によると、以下のような内容となっている。
- 報酬額: 59万6000円
- 控除合計額: 19万4800円(所得税)
- 差引支給額: 40万1200円
この明細を見たへずま氏は「地方議員でもこんなにあるんですね。感謝の気持ちと緊張感が高まりました。何としてでも結果を残します」とコメントしている。
年収は約1000万円と公表
へずまりゅう氏は、元「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏のYouTubeチャンネルに出演した際、「給料(議員報酬)は月に60万円。年収で言うと、1000万円ぐらいもらいます」と具体的な金額を公表した。
三崎氏が「マジで?すごくね?」と驚くと、へずま氏は「奈良市議会議員というのは、県庁所在地の奈良市なんです。その分、ほかの市よりもお給料が高くて。だからこそ責任を持ってやらないといけないと」と説明している。
全国の地方議員報酬との比較分析
市議会議員の全国平均との差
全国の市議会議員の平均報酬と比較すると、奈良市議会議員の報酬水準の高さが際立っている。
- 奈良市議会議員: 月額59.6万円
- 全国市議会議員平均: 約40.7万円
- 差額: 約18.9万円(全国平均より高い)
この差は、奈良市が県庁所在地であり、人口規模や都市機能を考慮した結果と考えられる。
地方議員の報酬階層
地方議員の報酬には明確な階層構造が存在している。
- 都道府県議会議員: 平均約81.3万円(年収約1000万円~)
- 市議会議員: 平均約40.7万円(年収約550万円~)
- 町村議会議員: 平均約21.4万円(年収約350万円~)
奈良市議会議員の59.6万円という報酬は、市議会議員の中では上位に位置し、むしろ都道府県議会議員の水準に近い金額となっている。
国民の反応と議論の分かれ道
多様な反応
へずまりゅう氏の報酬公開に対するネット上の反応は大きく分かれている。
肯定的な反応:
- 「この報酬で、こんなにあるなど言えるアンタはマトモ。その感覚は忘れないでいてくれたらと思う」
- 「堂々公開素晴らしいな」
批判的な反応:
- 「所得税エグい」「税金で19.4万円引かれるのヤバいよな」
地方議員報酬の「低さ」という全国的課題
なり手不足の深刻な現実
へずまりゅう氏の「地方議員でもこんなにある」という発言とは対照的に、全国的には地方議員報酬の低さが深刻な問題となっている。
特に町村議会議員においては、月額平均21.4万円という水準で、「それだけでは生計を維持できないほどの低水準」と指摘されている。
議員のなり手不足との関係
第32次地方制度調査会の答申では、「議員報酬については、主として小規模市町村において、それだけでは生計を維持できないほどの低水準であり、そのことが議員のなり手不足の要因である」と明確に指摘している。
実際に、町村議会では以下のような深刻な状況が発生している。
- 無投票当選率: 20.6%
- 定数割れ: 5.2%(10町村)
- 現職議長の3分の2以上が「議員報酬がなり手不足に影響している」と回答
報酬増額の動きも
この現状を受けて、全国的に議員報酬を見直す動きも見られている。
平成27年から令和4年までの7年間で、全国925の町村のうち222町村(24%)で報酬増額が実施されている。
奈良市議会議員報酬の妥当性を検証
人口規模別の報酬比較
人口規模別に見た市議会議員の平均月収は以下のようになっている。
- 30~40万人未満: 約67万円
- 20~30万人未満: 約55万円
- 10~20万人未満: 約46万円
- 5~10万人未満: 40万円
奈良市の人口は約36万人であり、この規模の都市としては標準的な報酬水準と言える。
政令指定都市との比較
政令指定都市レベルでは、さらに高額な報酬が設定されている。
- 横浜市議会議員: 年収約1400万円
- 名古屋市議会議員: 年収約1000万円超
- 大阪市議会議員: 議員報酬削減により年収約800万円
奈良市議会議員の年収約1000万円は、政令指定都市の下位レベルに相当する金額である。
へずまりゅう氏の発言が投げかけた問題
「責任の重さ」への言及
へずまりゅう氏は報酬公開の際に「奈良市民の血税は無駄にはしません。何倍も奈良の利益になるようにします」と責任の重さを強調している。
また、「何もしない議員が一番得をします。政務活動費についてはまだ使用していません。県外移動が増えれば少なくなりますが自分は誰よりも皆様に寄り添い行動で示します」とも述べ、議員活動への真摯な取り組みを表明している。
税負担の重さへの驚き
へずま氏の妻も「あと所得税約20万円も引かれるのはびっくり」とコメントしており、高額な報酬に伴う税負担の重さに驚いている様子が伺える。
これは、一般的な会社員では経験しない高税率の所得税負担を実際に体験したことによるものと考えられる。
地方議員報酬制度の今後の課題
適正報酬水準の模索
現在の地方議員報酬制度は、以下のような矛盾を抱えている。
- 大都市部: 比較的高額な報酬が設定されているが、生活コストも高い
- 中小都市: 全国平均程度の報酬で、専業化が可能なレベル
- 町村部: 生計維持困難な低水準で、なり手不足が深刻
議会改革との連動
全国町村議会議長会では、議員報酬の充実と併せて以下の改革を提言している。
- 議会活動の活性化
- 住民との対話機会の拡大
- 政務活動費の適正活用
- 議員研修の充実
まとめ:「低い」かどうかは視点による
へずまりゅう氏の議員報酬公開を通じて明らかになったのは、地方議員報酬に対する認識の複雑さである。
奈良市議会議員の月額59.6万円という報酬は、
- 全国平均と比較すれば: 明らかに「高い」水準
- 都市規模を考慮すれば: 「標準的」な水準
- 職責の重さを考慮すれば: 「適正」な水準
- 税引き後の手取りでは: 「現実的」な水準
重要なことは、報酬の高低だけでなく、その報酬に見合った働きをしているかどうかである。
へずまりゅう氏の「何としてでも結果を残します」という言葉が、今後の議員活動でどのように実現されるかが注目される。
地方議員報酬制度は、民主主義の根幹に関わる重要な課題である。
へずまりゅう氏の率直な発言と行動が、この問題について国民がより深く考えるきっかけとなることを期待したい。
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