原口元気 ベルギー2部移籍の理由といきさつ

2025年9月4日、浦和レッズのMF原口元気(34)がベルギー2部リーグのKベールスホットVAへの移籍が明らかになった。 古巣復帰からわずか1年での決断となった今回の移籍には、複数の要因が絡み合っている。

浦和での出場機会減少が移籍の引き金

原口の移籍を決定的にしたのは、浦和での出場機会の大幅な減少である。 2024年9月にドイツから10年ぶりに復帰した原口は、今シーズン開始時には大きな期待を背負っていた。 しかし実際のパフォーマンスは期待を下回る結果となった。 今季のJリーグでは、原口は主に終盤の途中出場で試合を締める役割を担ったが、持ち味を十分に発揮することができなかった。 リーグ戦での先発出場はわずか2試合にとどまり、8月31日の新潟戦では今季初めてベンチからも外れる事態となった。 この出場機会の激減は、34歳という年齢を考慮すると、原口にとって深刻な問題であった。 欧州での長いキャリアを持つベテラン選手として、試合で自身の価値を証明する機会を求めていたが、浦和ではその環境を得ることが困難な状況となっていた。

チーム戦術との不適合

原口の苦戦には、浦和の戦術システムとの相性の悪さも影響している。 現在の浦和は、ボール保持を重視するポゼッション型のサッカーを志向している。 しかし原口は、ドイツでの10年間で培った守備的な戦術や、ボール非保持時での貢献を得意とする選手に変化していた。 この戦術的なミスマッチは、原口が本来の力を発揮することを妨げる要因となった。 チームが求める役割と、原口が最も貢献できるプレースタイルとの間にギャップが生じていたのである。

ファン・サポーターからの厳しい評価

原口の低調なパフォーマンスは、浦和のファン・サポーターからも厳しく評価されていた。 クラブOBの興梠慎三氏は、原口について「全然ダメだな。アイツいま。本当にもうちょい頑張らないと」と苦言を呈しており、SNS上でも原口のプレーレベルが浦和所属選手として相応しくないとの意見が相次いでいた。 こうした周囲からの厳しい視線は、原口にとって大きなプレッシャーとなっていたことは想像に難くない。 生え抜きの選手として愛されてきた原口だけに、ファンからの失望は特に重いものであったと考えられる。

ベールスホットVAという選択

移籍先として選ばれたベールスホットVAは、ベルギー2部リーグに所属するクラブである。 同クラブは昨季ベルギー1部で最下位に沈み、2部に降格したばかり。 現在は1部復帰を目指しており、今季は4節終了時点で2勝2分けの5位につけている。 注目すべきは、2020年から2022年にかけて、元日本代表FWの鈴木武蔵(現横浜FC)が同クラブでプレーしていたことである。 日本人選手の受け入れ実績があることも、原口の移籍決定に影響したと考えられる。

日本人投資家グループの存在

ベールスホットVAには、もう一つ興味深い要素がある。 現在、同クラブはサウジアラビアのアブドラ王子の持ち株会社が保有しているが、日本人投資家グループによる買収の可能性が報じられている。 この日本人グループは、2200万ユーロ(約35億8,000万円)の負債を全額引き受ける形での買収を検討しており、原口の移籍はこうしたクラブの将来的な方向性とも関連している可能性がある。

新天地での再起への期待

原口は近日中に渡欧し、ベールスホットVAで新たなキャリアをスタートさせる予定である。 34歳という年齢ながら、欧州での豊富な経験を持つ原口にとって、ベルギー2部は自身の能力を再び証明する絶好の舞台となる可能性がある。 ボール非保持時での献身的な守備や、経験豊富なベテランとしてのリーダーシップは、1部復帰を目指すベールスホットVAにとって貴重な戦力となるだろう。

ドイツでの10年間が築いた基盤

原口の移籍決断を理解するためには、ドイツでの10年間のキャリアを振り返る必要がある。 2014年に浦和からヘルタ・ベルリンに移籍した原口は、その後デュッセルドルフ、ハノーファー、ウニオン・ベルリン、シュトゥットガルトと5クラブを渡り歩いた。 この間、原口は単なるドリブラーから、守備も含めた総合的な選手へと進化を遂げた。 特にハノーファーでは2部降格を経験しながらも、攻撃の中心として得点を量産し、翌年の1部昇格に貢献した。 しかし、最後に所属したシュトゥットガルトでは出場機会に恵まれず、2023-24シーズンはブンデスリーガでわずか2試合の途中出場にとどまった。 この経験が、原口に「プレーできる環境」の重要性を再認識させたと考えられる。

浦和復帰時の高い期待値

2024年9月の浦和復帰時、原口は大きな期待を背負っていた。 10年ぶりの古巣復帰ということもあり、クラブは原口に副キャプテンの重責を託し、背番号も前回と同じ「9」を与えた。 原口自身も「浦和は30年間で1回しか優勝できてないことを選手もフロントも全員が目を背けてはいけない」と力強く語り、チームの優勝に向けた強い意志を示していた。 しかし、実際のプレーではこうした期待に応えることができず、「何のために帰ってきたかと言うと、このクラブを優勝に導くため」という言葉とは裏腹に、期待を裏切る結果となってしまった。

移籍発表前の兆候

原口の移籍には、事前にいくつかの兆候があった。 8月24日の川崎フロンターレ戦後、原口は試合結果が引き分けにも関わらず、サポーター前で写真撮影を行い、ユニフォームを投げ入れる行為を見せていた。 この行動は、移籍の前兆として多くのファンに注目されており、実際に移籍発表後には「やっぱり移籍で退団なんだね」といった反応が見られた。

ベルギーリーグでの日本人選手の活躍

原口が移籍するベルギーリーグは、近年日本人選手が多く活躍するリーグとなっている。 シント=トロイデンには7人もの日本人選手が所属しており、遠藤航(リバプール)や冨安健洋(アーセナル)といった日本代表の主力選手も、同国での経験を積んでいる。 こうした環境は、原口にとって心理的な安心感を提供する要素となったと考えられる。 また、言語面でのサポートや、日本人特有のメンタリティを理解してもらえる環境も、移籍決定の後押しとなった可能性がある。 今回の移籍は、原口元気にとって新たな挑戦の始まりとなる。 浦和での苦い経験を糧に、ベルギーの地で再び輝きを取り戻すことができるか。 34歳のベテランアタッカーの第二の挑戦に、注目が集まっている。

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