嵐が紅白に出場しない理由|ラストイヤーの葛藤と選択

今年、大みそかの「第76回NHK紅白歌合戦」に嵐の出場が正式に発表されず、ファンやメディアから大きな波紋が広がっています。 12月14日に明らかになった嵐サイドの選択には、単純な「不参加」では済まない、複雑な背景と切実な思いが隠されています。 本記事では、国民的アイドルグループが人生の最終章を迎える中での葛藤を、複数の情報源から丹念に検証し、その真実に迫ります。

2026年5月で活動終了——ラストイヤーの重要性

嵐が本格的な舞台復帰に向けて動き始めたのは、今年5月のことでした。 2020年12月31日の紅白歌合戦を最後に、5年以上活動を休止していた彼らは、5月6日にファンクラブサイトで衝撃の発表をします。 メンバー5人が1587日ぶりに揃った動画で、2026年春にラストツアーを開催し、同年5月31日をもって活動終了することを明かしたのです。

来年の5大ドームツアー「ARASHI LIVE TOUR 2026『We are ARASHI』」は、3月13日の北海道・大和ハウスプレミアムドームから5月31日の東京ドームまで、計15公演の予定です。 事実上、これが嵐として歌う最後の大舞台になります。

NHKは継続的に交渉——なぜ出演が実現しなかったのか

11月14日に行われた紅白出場歌手の発表会見で、ファンが最も注視していたのは、嵐の名前が読み上げられるかどうかでした。 しかし、その期待は裏切られます。 発表会見で記者から「嵐は出演するのか」と直球の質問が飛ぶと、NHK紅白歌合戦の制作統括・篠原伸介氏は「期待値の高いアーティストについては、引き続き継続的に交渉させていただく」と返答するにとどまります。

実は、NHK側は嵐の出演実現に向けて、水面下で複数回の交渉を重ねていたと報じられています。 12月10日時点で、業界関係者からは「嵐の紅白出場は99%ない」との見方が広がっていました。 一部報道では、NHKが局全体で嵐の活用を検討していたものの、ある要因によってすべてが白紙状態になったと指摘されています。

大野智の「精神のリハビリ中」——根底にある懸念

嵐が紅白を断った背景には、リーダー・大野智のコンディションが大きく関係しています。 11月3日、ファンクラブ限定の生配信でメンバー5人が揃った際、大野は自身の状況について率直に語りました。

「精神のリハビリ中です。 体力づくりはまだやっていません」

この発言は、ファン層のみならず、業界関係者にも衝撃を与えます。

活動休止中、大野は沖縄・宮古島に拠点を移し、約4年半にわたり芸能活動から距離を置いてきました。 小麦色に焼けた肌とひげをたくわえた新しい容貌で現れた彼は、「4年半ぐらい自由に生きさせてもらった」とも発言しています。 しかし、自由な時間を得た一方で、再び「パフォーマー」として舞台に立つまでの道のりは、想像以上に険しいものだったようです。

嵐の哲学——「ファンを優先する」という選択

業界関係者によると、嵐が紅白出演を断った理由は、単なるコンディション不良だけではありません。 嵐には一貫した哲学があります。 それは、「5人が揃うのはファンの前で」という強固なこだわりです。

嵐は2009年から活動休止前の2020年まで、実に12年連続で紅白舞台に立ちました。 その長い歴史の中で、彼らは「ファンに真摯に向き合う」ことを最優先にしてきたグループです。 活動休止を発表した時も、活動再開を発表した時も、必ずファンに対して直接的な説明を行ってきました。

来年5月末での活動終了が決まっている現状では、テレビ放送という「不特定多数の一般視聴者を前にしたパフォーマンス」よりも、チケット購入者である「ファンの目の前でのライブ」を優先するという判断は、嵐らしい選択と言えるでしょう。 実際、3月から始まるラストツアーに向けて、チケット申し込みは大盛況であり、多くのファンが嵐の「最後のステージ」を待ち望んでいます。

メンバー間の温度差——松本潤の懸念

興味深いことに、嵐のメンバー間でも紅白出演に対する温度差があったと報じられています。 実は、大野本人は「紅白出場に前向き」という報道もあります。 来年で活動を終える中での最後のチャンスであることを考えれば、テレビの大舞台での演奏を望むメンバーがいるのも自然です。

しかし、グループ内では異なる意見も存在しました。 特に注目されるのは松本潤の懸念です。 松本は大野のコンディションについて「年末までに間に合わないかもしれない」と考えていたと複数のメディアが報じています。

「大みそかの紅白でパフォーマンスを披露できるような状態には至っていない」という判断が、グループ全体の「紅白辞退」という決定に影響した可能性が高いです。 メンバーの中心人物である大野が、心身両面での安定を取り戻すことが、グループ全体の優先事項だったのです。

SMAPの「後悔」が影響?——活動終了直前の出演選択

業界内では、別のグループの事例が今回の判断に影響を与えたと指摘されています。 それは、2015年に活動を終了した「SMAP」です。

SMAPは活動終了の年に紅白に出演せず、それが「後悔」として後々語られることになりました。 この事例を踏まえ、一部メンバーは「最後の年に紅白には出るべきではないか」と考えていたとも言われています。 しかし、SMAPと異なるのは、嵐には「ファンに対する責任」という強い意識があることです。

完全な状態でステージに立てないなら、むしろ出演しない選択もまた、ファンへの誠意だという判断が、最終的な決定を左右した可能性があります。

3月スタートの5大ドームツアーが変えたもの

状況に変化をもたらしたのは、11月22日の発表です。 嵐は来年のラストツアーの開始時期を「3月スタート」と公式発表しました。

これは業界関係者に驚きをもたらします。 大野が11月3日の時点で「精神のリハビリ中」と語っていたからです。 通常、本格的なライブツアーを3月に開始するには、年明け早々からの準備が必要になります。 楽曲の音合わせ、ステージでの動き作り、フィジカルトレーニング——こうした要素が、大野の精神的・身体的な回復の見通しと密接に関わっているはずです。

3月スタートの決定は、大野のコンディションについて「年末までには完全ではないが、年明けの準備を通じて3月までには本番に臨める」という、メンバー内での暗黙の了解があったことを示唆しています。

「不確かな状態での大舞台」への慎重さ

紅白歌合戦は、日本で最も視聴者数の多い音楽番組の一つです。 2024年の視聴率は45.8%を記録し、今年も40%を超える大きな注目を集めることが予想されます。 生放送という性質上、やり直しは聞きません。

大野をはじめとした嵐が、このような巨大な舞台での「失敗」を回避したいという心理は、容易に想像できます。 特に、5年以上のブランクがある中での復帰であり、精神的な準備もまだ進行中という段階では、「完全な準備が整うまで待つ」という判断も理に適っています。

グループの関係者は、こうした慎重さについて「ツアーに向けた準備が整えば、来年は歌番組に出演する機会もあるのではないか」とコメントしています。 つまり、紅白は「今年を逃す」かもしれないが、別の形での再出演の可能性は残されているということです。

ファン層からも支持の声

注目すべきは、この決定に対してファン層からも一定の支持が集まっていることです。 12月時点の反応では、「無理をして出てほしくない」「大野の回復を最優先してほしい」という意見が複数見られました。

嵐のファンは、長年にわたってグループの活動を支持してきた層です。 活動休止中も、復帰後も変わらずサポートしていたコミュニティです。 彼らにとって最優先事項は、嵐が「心身ともに健全な状態で最後のステージに臨むこと」であり、紅白というテレビ番組での出演よりも、ラストツアーでのライブパフォーマンスなのです。

5月の活動終了に向けた最後のカウントダウン

現在、嵐は来年の活動終了に向けた着々とした準備を進めています。 ラストツアーのチケット申し込みは大盛況であり、3月から5月にかけての15公演は、すべての舞台が満員となることが予想されます。

生配信の実施も決定されており、チケットが取れなかったファンも、嵐の最後のパフォーマンスを目撃する手段が用意されています。 この形態は、嵐が「ファンを優先する」という哲学を実践する、具体的な現れと言えるでしょう。

また、メンバーたちは個人での活動も継続しています。 相葉雅紀は「相葉マナブ」や「FNS歌謡祭」への出演、二宮和也は「ニノさん」や「よにのちゃんねる」での配信活動、櫻井翔は「ZIP!」や「news zero」での司会業務を務め、年末に向けて通常業務をこなしています。

紅白の異常事態——白組の人数不足

一方、NHK側の事情も複雑です。 今年の紅白歌合戦は、白組の出場者が紅組より「3枠少ない」異常事態に陥っていました。 12月3日にAKB48の追加発表があっても、なお白組は人数が足りない状況が続いていたのです。

理由は、2023年と2024年の旧ジャニーズ問題に関連した出場者制限にあります。 STARTO ENTERTAINMENTに所属する複数のアーティストが当初参加できない状況だったのですが、今年に入ってその制限が緩和され、King & PrinceやSixTONESの出場が決定されました。

この状況下で、嵐の存在は「白組の人数を埋める切り札」となっていました。 実は、SixTONESの出場決定と嵐の交渉のタイミングについて、「NHKはSixTONESをキャスティングすることで、嵐の出演を促そうとしていた」という報道も存在します。

しかし、そうした戦略的な思惑をよそに、嵐はあくまで「グループの状態」を優先させるという判断を下したのです。

ジャニーズ問題からの解放——自由な選択肢

もう一つ見落とせない背景が、ジャニーズ問題からの形式的な解放です。 STARTO ENTERTAINMENTへの移籍により、旧ジャニーズ所属時代の各種制約から相対的に自由になった嵐。 以前であれば「事務所からのオファーには応じるべき」という圧力があったかもしれません。

しかし今、嵐には「出演を断る自由」も手に入れています。 この自由を使って、グループの真の状態を優先させるという決定を下したことは、彼らが本当の意味で「自由」を取り戻したことを象徴しているとも言えるでしょう。

来年の可能性——完全に0ではない

最後に重要な点として、嵐の紅白出演の可能性は完全には消滅していません。 NHK側の公式コメントである「継続的に交渉させていただく」という発言は、決して空文句ではなく、実際の交渉が今も続いている可能性を示唆しています。

もし大野のコンディションが想定以上に早く改善され、メンバー全体の準備が整えば、サプライズ出演の形での復帰も、論理的には不可能ではありません。 紅白は例年、12月中盤以降も大物アーティストのサプライズ発表が行われる場であり、最後の瞬間までの調整が続くのです。

しかし、現時点では、嵐側が「焦らない」という判断を下している。 それは、ファンに対する誠実さであり、グループの心身の回復を最優先にする哲学の現れなのです。


嵐が紅白に出場しない理由は、単なる「体調不良」でも「事務所の判断」でもありません。 5年以上の活動休止を経て、来年の活動終了という人生の最終章を迎える中で、グループが自らの状態と責任を真摯に向き合った結果です。 ファンを優先し、完全な準備が整うまで待つという選択は、長年にわたってファンに寄り添ってきた嵐らしい決断と言えるでしょう。

大みそかに彼らの姿が紅白のステージにはないかもしれません。 しかし、来年の春、5大ドームツアーで彼らが満を持して歌い踊る姿こそが、ファンにとって最大の「報われた」瞬間になるはずです。

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