官能小説というニッチながら奥深い業界を舞台にした新しいドラマが、2026年1月7日からテレビ大阪で放送される。
その主人公を務めるのは、お笑い芸人チュートリアルの徳井義実。
50歳にしてついに地上波ドラマ初主演を果たす彼が、なぜ官能小説編集長という異色の役を選ばれたのか。
その背景には、徳井のキャラクターと長年のエロスへの向き合い方がある。
地上波ドラマ初主演という快挙
ドラマ「令和に官能小説作ってます」は、テレビ大阪とDMM TV、TVerで配信される連続ドラマだ。
徳井義実が演じるのは「フランス出版」の官能小説編集部編集長・玉川丈治。
穏やかでありながら仕事に熱く、部下や作家からの信頼も厚く、官能小説の地位向上を密かに夢見ている人物だ。
同じくコスプレイヤーで俳優・モデルとして活躍する桃月なしことのダブル主演となっており、彼女も地上波連続ドラマは初主演となる。
これは30年を超えるキャリアを持つ徳井義実にとって、大きな節目となる。
バラエティ番組「しゃべくり007」をはじめとした多くの番組で活躍し、時折ドラマに出演してきた徳井だが、主演を任されるのは初めてだ。
大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」など著名な作品への出演経験はありながらも、主役の座は獲得していなかった。
長年のエロスへの敬意が評価された理由
徳井が選ばれた最大の理由は、彼のキャラクターにある。
ドラマ化のオファーを受けた徳井は、こう述べている。
「長年エロスに関しては人一倍敬意を払って生きてきました。
それを神様が見てくださっていたのか、官能小説出版社の編集長という願ってもない役がいただけて、歓喜しております」
このコメントは、単なる冗談ではなく、徳井の実際のキャラクターの本質を表している。
彼は、バラエティ番組での発言や活動を通じて、エロティシズムに対して真摯で、ユーモアを交えながらもリスペクトを持って接する姿勢を一貫して見せてきた。
このような特異なキャラクターが、今回の役柄に適していると判断されたのだ。
また、プロデューサーや関係者も、このキャスティングについて高い評価を示している。
オファーを受けた原作者のさとうユーキも、「ドラマ化のお話をいただいた時『正気ですか!?』と思ってしまいました。
官能小説という大人の文学、さらにその出版編集部のお話という非常にニッチなテーマをドラマ化するに当たり、どのような表現になるのか今から非常に楽しみ」とコメント。
キャスティングに対しても期待を込めた反応を示している。
原作は実話ベース|フランス書院の実際の編集部から
このドラマの原案となっているのは、著者さとうユーキが著した「令和に官能小説作ってます」という漫画だ。
興味深いことに、このストーリーは日本の官能小説業界を牽引する出版社「フランス書院」で実際に起こったエピソードをベースにしている。
フランス書院は1975年に創業した、日本を代表する官能小説出版社である。
「官能小説と言えばフランス書院」と言われるほどの知名度を持ち、黒い背表紙に黄色い文字のタイトルが特徴の「フランス書院文庫」は、書店でも非常に目立つ存在だ。
1985年に創刊されたこのレーベルは、以来40年以上にわたって日本人作家による書き下ろし官能小説の中核を担ってきた。
実在する出版社の実際の編集部をベースにすることで、ドラマは単なるフィクションではなく、業界の実像に迫ることができる。
これが、よりリアリティのあるドラマ作品を実現させている。
異色のお仕事ドラマとしての新しさ
このドラマが注目される理由は、役者のキャスティングだけではない。
お仕事ドラマというジャンル自体の新しさにもある。
ストーリーは、新人編集者・大泉ましろ(桃月なしこ)がマンガ編集者を目指して「フランス出版」に転職するも、まさかの官能小説編集部に配属されてしまうところから始まる。
彼女が驚愕する中、編集長の玉川丈治(徳井)と編集部のメンバーが「隣人」を題材にした新刊のタイトルについて激論を交わしている。
会議で飛び交う卑猥なワード、淫らなイラストへの探求、タイトルや帯のキャッチコピーまでこだわり抜く編集部員たち。
ドラマは、ユーモアだけでなく、官能小説編集の真摯さも描いていく。
二次元から実写までさまざまなコンテンツがネット上に溢れる令和の時代に、あえて「活字」だけで勝負する官能小説。
文字だけで読者の想像力を膨らませるために、本文内の表現はもちろん、タイトルや帯のキャッチコピーなど細かな部分まで編集部員たち皆でこだわって作っているのだ。
出版業界を舞台にしたドラマは数あれど、「官能小説編集部」という世にも珍しい設定は、業界人の真摯な奮闘と、ユーモアのバランスを生み出している。
このニッチで奥深い世界へ、多くの視聴者が興味を持つようになるかもしれない。
徳井のキャリアと今回の役の意義
徳井義実は、1974年生まれの50歳。
長年バラエティ番組での活躍で知られ、相方の福田充徳とのコンビ「チュートリアル」は、日本のお笑い芸人の中でも重要な位置を占めている。
彼は「しゃべくり007」などの番組で、独自のキャラクター「エロスに敬意を払う芸人」として確立され、幅広い世代から親しまれてきた。
近年の徳井は、YouTube「徳井video」での新しいコンテンツ制作にも力を入れている。
キャンプや料理などの日常系コンテンツで、新たなファン層を獲得している。
今回の地上波ドラマ初主演は、そうした多面的な活動の流れの中で、さらに新しいステージへ進むきっかけとなるだろう。
原作者さとうユーキの手腕
原作者のさとうユーキは、埼玉県出身の漫画家で、1982年生まれだ。
「漫画家アシスタント三郷さん(29)は婚活中」などで知られ、2020年にはYouTubeアニメ化された「うっかり幼馴染と結婚の約束をしてしまってた結果」でも注目を集めている。
ニッチなテーマを扱いながらも、人間的な深みと笑いを交えた表現で、多くの読者に支持されてきた彼だからこそ、この異色のドラマの原作を手がけることができたのだろう。
企画背景と配信予定
このドラマは、テレビ大阪にて2026年1月7日より毎週水曜深夜0時から放送される。
DMM TVで見放題独占配信も行われ、TVerでも見逃し配信が予定されている。
打ち切りなく全話配信される予定で、現代社会におけるエロティックな表現と、その編集・制作現場の葛藤と奮闘を描く、新しいお仕事ドラマとしての期待が高まっている。
期待される視聴層
このドラマが視聴対象とする層は、従来のドラマ視聴者だけではない。
官能小説ファン、出版業界関心層、そして徳井義実のファンが重なる層が存在する。
また、原作の漫画ファンも、実写ドラマ化されたストーリーの新たな表現方法に興味を持つだろう。
タイトルからは想像できない深い話になっているという桃月なしこの言葉通り、官能小説に対する世間の偏見や、登場人物の家族との向き合い方など、人間ドラマとしてのテーマも盛り込まれている。
徳井義実のコメント全文が示すもの
徳井が述べた「禁断の世界を覗いてみてください」というコメントの後ろには、単なるキャッチコピーではなく、本当の敬意がこもっている。
官能小説という、世間的にはタブー視されることもあるジャンルを、真摯に、そしてユーモアを持ってアプローチする姿勢が、このドラマ全体を支えるのだ。
地上波ドラマの初主演という大きな舞台で、徳井義実がどのように官能小説編集長という役を体現するのか。
視聴者の期待は、これまでの彼のキャリアの中でも最高潮に達しているといえるだろう。


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