オードリー・ヘプバーン以来の大役に挑む
2025年11月6日、女優の沢尻エリカ(39)が2026年1月に舞台「ピグマリオン−PYGMALION−」で主演することが発表されました。
この発表は、かつての人気女優が新たなステージへ踏み出す重要な節目となります。
沢尻が演じるのは、イライザ・ドゥーリトル役。
この役は、1964年の映画『マイ・フェア・レディ』でオードリー・ヘプバーンが演じた伝説のヒロイン役です。
2020年代の日本舞台で、このアイコニックなキャラクターに日本人女優が挑むことは、戦後最高峰の舞台化といえるでしょう。
ピグマリオンとはどんな作品なのか
「ピグマリオン」は、1913年にウィーンで初演されたジョージ・バーナード・ショーの傑作喜劇です。
ショーは1925年にノーベル文学賞を受賞した英国を代表する劇作家で、この作品は英語圏の演劇史において特別な位置づけを持っています。
舞台は1913年のロンドン。
強いコックニー訛りで話す貧しい花売り娘のイライザが、著名な音声学者ヒギンス教授と出会い、その盟友ピカリング大佐とともに、彼女を6ヶ月で上流階級の淑女へと変身させるプロジェクトに取り組みます。
イライザは激しいレッスンと葛藤を経て、社交界での舞踏会で大成功を収めるという成長物語です。
この作品は単なるラブストーリーではなく、当時のイギリスの厳密な階級社会に対する辛辣な風刺であり、同時に女性の自立というテーマを先駆的に扱った傑作として知られています。
後に、このストーリーはアラン・ジェイ・ラーナーによってミュージカル化され、1956年に「マイ・フェア・レディ」としてニューヨークで初演されました。
映画版『マイ・フェア・レディ』(1964年)はオードリー・ヘプバーン主演で世界的な大ヒットとなり、映画史に永遠に刻まれる作品となっています。
沢尻エリカの復帰経緯
沢尻エリカが舞台「ピグマリオン」出演を発表される背景には、彼女の波乱万丈なキャリアの歩みがあります。
沢尻は2005年の映画『パッチギ!』で素朴な美少女役を演じて女優の道を切り開き、『1リットルの涙』や『ヘルタースケルター』などの話題作で脚光を浴びました。
しかし2019年に麻薬取締法違反容疑で逮捕され、当時出演予定だった大河ドラマ『麒麟がくる』から降板するなど、表舞台から姿を消しることになりました。
その後、沢尻は長い沈黙の期間を経て、2024年2月に舞台『欲望という名の電車』で約4年ぶりの舞台主演として復帰を果たします。
この決定は大きな話題を呼びました。
初公判では深く反省の意を示し「復帰する資格はない」と述べていた本人が、約4年後に舞台の世界で新たなキャリアを開始したのです。
舞台『欲望という名の電車』は好評を博し、沢尻の迫真の演技がブランクを一切感じさせない質の高いものであったことが伝えられました。
この成功が、次の大きな舞台作品へのオファーにつながったと考えられます。
復帰から「ピグマリオン」出演まで
2024年の舞台復帰後、沢尻への活動依頼が相次ぐようになります。
2025年4月には、カラーコンタクトレンズブランド「Kaica(カイカ)」のイメージモデルに就任。
10月には「DIG」というスポーツアパレルブランドの設立発表会に出席し、1年8ヶ月ぶりに大々的に姿を見せました。
この時の沢尻の笑顔と活躍ぶりから、芸能活動が心底楽しい様子が伝わってきたと報道されています。
さらに、同じく10月には約7年ぶりの映画出演が発表されました。
2026年2月27日公開予定の映画『#拡散』(成田凌主演)での新聞記者役です。
映像作品への出演は、昨年の舞台『人間失格 太宰治と3人の女たち』以来となります。
この映画は社会派ドラマで、沢尻の演技力を活かせる意欲的な作品として注目を集めています。
実は、複数のメディア報道によると、沢尻のもとには大物アイドルとのW主演作品の企画も進行中で、意外な役に挑戦しているといいます。
オファーが殺到し、むしろどの仕事を選ぶかが問題になるほどの逆転した状況が生まれているのです。
舞台出演の意義と「ピグマリオン」のキャスティング
沢尻がピグマリオンの主演に抜擢された背景には、イライザというキャラクターと沢尻のパーソナリティに共通点があるという視点があります。
イライザは、下町のなまりがひどい花売り娘として始まるものの、困難なレッスンを乗り越えて自立した女性へと成長していくキャラクターです。
社会から厳しい目を向けられながらも、自分のペースで前に進んでいく姿勢は、沢尻自身のこれまでの人生経験と重なる部分があります。
舞台関係者も「どこか重なる部分が多い。
沢尻さんだからこそ演じられるイライザが楽しみ」とコメントしており、キャスティングの必然性を感じさせます。
沢尻は自身のコメントで「こんな素敵な作品に出会えて感謝しております。
全身全霊、心を込めて作っていきたいと思います」と述べ、高い意気込みを示しています。
また、「イライザの成長ストーリーは作品の見どころなので、注目していただけましたら」とアピールしており、単なる出演ではなく、この役を深く理解して演じることへの覚悟が感じられます。
さらに、沢尻は舞台の持つ特別な魅力について次のように語っています:「舞台というのは生もので、キャストやスタッフ、そしてお客さんがひとつの空間で一緒にお芝居を作る特別な場所だと思っています。
映像では味わえない世界観、それをぜひ体験してもらいたいです」。
舞台という表現形式への深い理解と愛情が伝わる言葉です。
豪華キャストとスタッフ
本舞台の出演者には、実力派俳優が集結しています。
ヒギンス教授役には、個性的な存在感で知られる六角精児(63)が配置されました。
フレディ・エインスフォードヒル役(若い青年で、イライザに好意を寄せる役)には、A.B.C−Z所属で舞台経験も豊富な橋本良亮(32)が抜擢されています。
さらに、平田満(72)、清水葉月、玉置孝匡、市川しんぺー、池谷のぶえ、小島聖、春風ひとみなど、舞台の実力派俳優たちが名を連ねています。
演出には、英国演劇界の重鎮ニコラス・バーター氏が来日します。
バーター氏は1904年にロンドンで設立された世界的な名門校、英国王立演劇学校の校長を1993年から15年にわたって務めた人物です。
彼は「沢尻さん、六角さんを筆頭とする豪華な日本人キャスト、著名な舞台美術とともに制作できることを大変うれしく思います」とコメントしており、この舞台への期待の大きさが伝わってきます。
上演スケジュールと全国展開
舞台「ピグマリオン−PYGMALION−」の上演は、東京を皮切りに全国4都市で展開される予定です
- 東京公演:2026年1月20日(火)〜2月8日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
- 名古屋公演:東京公演終了後
- 北九州公演:東京公演終了後
- 大阪公演:東京公演終了後
チケットは、2025年11月7日(金)より先行発売が開始され、2025年12月21日(日)10:00から一般発売が予定されています。
イライザという役の意味
映画『マイ・フェア・レディ』では、ストーリーがロマンチックに改変され、イライザとヒギンス教授が結ばれるハッピーエンドになっています。
しかし、原作の舞台「ピグマリオン」では異なります。
本舞台版では、イライザは自分の意志で自分の人生を選ぶことになるというのです。
これは、原作者ジョージ・バーナード・ショーの女性の自立に対するこだわりが反映された重要な違いです。
1913年という時代に、女性が男性に従うのではなく自分の人生を自分で選択するストーリーを書いたショーの先見性と、その思想性は現代でもなお新鮮で、問い直す価値のあるテーマです。
沢尻が演じるイライザが、どのように自立した女性として描かれるのか、そして俳優沢尻エリカがこのキャラクターを通じて何を表現するのかは、本舞台最大の見どころとなるでしょう。
「エリカ様」から舞台女優へ
沢尻エリカは、2000年代から2010年代にかけて「エリカ様」の愛称で親しまれ、類まれな存在感を放つ女優として活躍してきました。
波乱万丈な人生経験を経て、今、彼女は新たな表現者として舞台の世界でその力を発揮しようとしています。
舞台『欲望という名の電車』での復帰から約2年、映像作品への本格的な復帰となる『#拡散』の撮影を経て、今度は英国の世界的な名作喜劇に挑む沢尻。
彼女がイライザという役を通じて、どのような世界観を観客に届けるのか。
2026年1月20日、その答えが明かされることになります。
人生において何度も落ち込み、何度も立ち上がってきた沢尻エリカ。
そしてイライザも、厳しいレッスンの中で幾度となく葛藤し、最終的には自分の道を自分で選ぶ女性へと成長していく。
二つのストーリーが舞台の上で交錯するとき、観客たちが目にするのは何か。
単なる一舞台作品ではなく、現代の女優が古典の傑作に向き合うことの意味が問い直されるのではないでしょうか。
2026年、沢尻エリカのマルチな活躍
2026年は、沢尻エリカにとって舞台、映像、広告など複数の領域で活躍する、キャリア復帰後初めての本格的な活動年となります。
すでに複数の大型プロジェクトが進行中という報道もあり、約7年のブランクからの本当の意味での「女優活動の再開」がこの年から本格化するのです。
舞台「ピグマリオン」は、その象徴的な作品となるでしょう。
かつてのトレンドセッターであり、映画界の寵児だった沢尻エリカが、今度は舞台という古典的で奥深い表現形式の中で、自らの表現力を問い直す機会となるのです。


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